富士山信仰を強く感じる場所。本殿が存在しない【山宮浅間神社】、山伏修行の拠点【村山浅間神社】

富士宮市の神社といえば「富士山本宮浅間大社」が有名だが、同じように富士山をまつり、また世界遺産に選ばれている神社のなかに「山宮浅間神社」「村山浅間神社」がある。訪れてみると、木々に囲まれた環境や街中とは違う静けさに、心が洗われる思い。富士山のもつパワーを、より強く感じられるような場所だ。
山宮浅間神社は、あるべき場所に本殿がないめずらしい造り
山宮浅間神社は富士宮市街から6kmほど富士山麓方面に向かったところにある。
市中心部にある富士山本宮浅間大社は、もともとこの山宮浅間神社にあった。
そこから、現在の場所に移転されたと言われる。
参道には杉の大木が並び、間を通ると背すじがすっと伸びる思いだ。
ここを進み、階段を上って高い場所に出ると、そこには本殿が・・・
ない。

一般的な造りの神社ならば本殿がある場所に建物がなく、
そこにあるのは、南北約15m、東西約8mの石組みの空間。
そう、この神社には本殿も社殿もなく、富士山を直接拝む「遥拝所(ようはいじょ)」があるのみ。
かつて村人たちが本殿を造ろうと試みたが、
何度も風に飛ばされてしまい結局造ることがかなわなかったそう。
現在、文化財保護のため遥拝所の垣根内に入ることはできないが、
富士山自体を神と考えて拝む、古代からの富士山祭祀のかたちを体感できる。
参道には鉾立石(ほこたていし)と呼ばれる2つの石が置かれている。
昔、ここ山宮浅間神社と富士山本宮浅間大社の間を、
鉾に神様を宿らせて行き来するという神事が行われていた。
途中で一休みする際、大切な鉾を地面に直接置くわけにはいかないので、
この石に安置していたという。
山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)
TEL 0544-22-1187(富士宮市文化課)
富士宮市山宮740
参拝自由 ※案内所は土・日曜、祝日の10~15時のみ開館
駐車場あり
村山浅間神社は、富士山で修行をする「修験道」の中心地

もともとは興法寺という寺があり、山に入って修行を積む「修験道」の中心地だった場所。
明治時代初めの神仏分離令によって興法寺は廃され、村山浅間神社と冨士山興法寺大日堂に分離した。

中心的な建物である富士山興法寺大日堂。賽銭箱には富士山が描かれている。
堂内には、本尊である大日如来のほか、役行者(えんのぎょうじゃ)像などがまつられている。

御堂のわきには水垢離場(みずごりば)がある。
石を組んで、深さ約60センチの水場を作ったもの。
神仏祈願の前に水を浴びて身を清めるための場所だ。
修験者は、ここで身を清め、けがれを落としてから富士山に登る。
村山浅間神社から少し歩くと、富士登山道のひとつである「村山口」がある。
現在の富士宮口6合目を経て富士山頂までを結ぶルートだ。
ただ、明治時代の廃仏毀釈で登山者が減ったこと、
その後新しい登山口が開かれたことにより、この村山口はほとんど使われなくなった。
村山浅間神社(むらやませんげんじんじゃ)
TEL 0544-22-1187(富士宮市文化課)
富士宮市村山1151
参拝自由 ※案内所は土・日曜、祝日の10~15時のみ開館
駐車場あり