富士山伏流水の恵み。こだわりのにじますを育て続ける「くぬぎ養鱒場 」

おいしい魚を育てるために欠かせないのが、きれいな水と環境。富士山麓にあるにじますの養殖場「くぬぎ養鱒場」では、芝川の清流を引き込み、にじますにとってストレスの少ない場を整えることで、健康的でおいしいにじますを育てることに成功している。ブランド鱒、「くぬぎ鱒」が生まれる場所を見てきました。
富士宮市の「市の魚」であるにじます。もともとは外来種だが、富士山の伏流水に恵まれた富士宮市では養殖が盛んになり、今では一大産地となっている。川魚には独特のにおいがあるのではという先入観を持つ人もいるだろが、実際に食べてみるとくせや食べづらさはない。このおいしさを体験しないのはもったいない!と思わされる。
今回訪れたのは、富士宮市精進川にある「くぬぎ養鱒場」。
養殖池を見て、にじますを育てている池の透明感やきれいさに驚いた。この水で育ったにじますにクセや泥くささがあるはずはない、そう思わせるような環境が整えられているのだ。

くぬぎ養鱒場には、約1000坪の敷地に10個の池と8つの水槽がある。
池のわきには水流があり、水質の良さで知られる芝川の水を引いている。
水温は一年を通して13度前後と安定しているそう。

養鱒場の主人、功刀(くぬぎ)さんいわく、この水を守るためには苦労もあったとか。
「川の周辺で土地開発が進んだり、工事等の影響があったり。そうなると川の水にも鱒にも影響が出るから、徹底的に話し合ったね」
池の周りを歩いていると、時折、にじますが跳ね上がるのが見える。
ずいぶん元気がいいんだなあ。

稚魚の水槽を見つめる功刀さん
功刀さんはくぬぎ鱒の健康状態と味に自信をもっている。
というのも、くぬぎ鱒は薬を使わずに育てているから。池の大きさや水温などにじますにとって過ごしやすい環境を作って稚魚期を育てることで、成魚になっても病気に強い魚になる。従来の「にじますは病気に弱い」という傾向とは反対に、病気に対抗するための薬を一切使わない、健康で安全でおいしいにじますを生み出しているのだ。
「ちょっと見てごらん」、と網ですくって見せてくれたにじますは、

体の赤色が非常に鮮やか。
ぴちぴちと全身で跳ねる姿に生命力の強さを感じる。
ヒレも尾もピンとしていてきれい!
「とにかく、健康体であることが強みであり自慢」と功刀さん。
「よく、にじますの評価として『臭みがなくておいしい』という言い方をするけれど、本当はそんなの当たり前。商品として、臭いにじますなんて出せるわけがない。食材はおいしくなければ意味がないし、おいしいものでないと生き残れないと思っている。そのためにできることを、ただ一生懸命にやるだけ」そうでした、はじめに「にじますには臭みが・・・」なんて言ってしまってすみません。
おいしさの理由には科学的なデータもある。
食べたときに「脂がのっておいしい」と感じる粗脂肪含有量の数値が、
一般的なにじますと比べて高かったそう。
にじますのことを考え、大切に、そして丁寧に育てているからこその結果だろう。

くぬぎ養鱒場には、釣り堀、つかみどりの池もあり特に夏場は盛況。
これは、にじますのおいしさを広く知ってもらうための場所として作っている。
実際に自分の手で獲ったものを食べてもらって、おいしさを実感してほしいという思いから。
その場で串を打って塩焼きにするもよし、クーラーボックスで持ち帰ってもよし。
現在、くぬぎ鱒は全国約360か所におろしている。エリアは全国におよび、
県内外のホテルやレストラン、高速道路サービスエリアの飲食店など。
ます作りに取り組む功刀さんの姿勢にひかれ、
ぜひくぬぎ鱒を使いたいという料理人や経営者の声が多いそう。

一般販売しているものとして、くぬぎ鱒の加工品もさまざまに用意。
刺身、切身、カマなどのパックを
東名高速の富士川サービスエリア等で扱っている(販売は第2土・日曜)。
こだわりが詰まったくぬぎ鱒。にじますを食べたことがないという人こそ、
おいしさの新しい扉が開かれるかも。
■くぬぎ養鱒場
電話 0544-58-1613
富士宮市精進川1001-1