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2024年11月05日

【富士山ワイナリー】富士宮はワインぶどうを育てるのに理想的な場所。日本古来の品種「甲州」で世界レベルのワインを作る

/userfiles/images/columns/42191/提供(insta)_夕焼け.jpeg 画像提供:富士山ワイナリー

富士山ワイナリーは、富士宮市の北部・朝霧高原にあるワイン醸造所。富士宮市と山梨県の7か所に自社畑を所有し、そこで採れたぶどうで世界基準をクリアしたワインを醸造しています。
ぶどうの品種は日本が誇る甲州種。その味わいは、世界的なワイン評論家から高く評価されています。

今回はワイナリーの創業者、アーネスト・シンガーさんと、立ち上げから携わってきた猪瀬まりさんにお話を伺いました。

富士山に最も近い場所にあるワイナリー

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国道139号を山梨方面に向かって車を走らせていくと、道の駅 朝霧高原の反対側に富士山ワイナリーを指し示す看板があります。この先に本当にワイナリーがあるのかな?と思ってしまうほど素朴な道が続いています。

/userfiles/images/columns/42191/1_cafe.jpg 画像提供:富士山ワイナリー

しばらく進むと視界が開け、スタイリッシュな建物が目に飛び込んできます。こちらが今回紹介する富士山ワイナリーと、併設のCafe SHIZEN(カフェシゼン)。360度ぐるりと自然に囲まれた素晴らしいロケーションです。

/userfiles/images/columns/42191/2_cafe MtFuji002.jpeg 画像提供:富士山ワイナリー

富士山ワイナリーは、世界中からワインを輸入し販売する商社を営むアーネスト・シンガーさんが、2007年に設立しました。
父親の仕事の都合で12歳の時に来日して以来、日本でさまざまなビジネスに携わってきたシンガーさん。60年以上住んだ日本に恩返しがしたいと思って始めたプロジェクトがこのワインづくりなのだそう。

山梨のワイナリーから、甲州ぶどうが絶滅の危機にあると聞いたシンガーさんは、リサーチを経て2003年に甲州ワインプロジェクトを立上げます。ボルドー大学醸造学部長 ドゥニ・デュブルデュー教授を招聘し、2004年には世界基準を満たすワインを製造しました。
その後、業界で権威のあるワイン評論家 ロバート・パーカー氏とデュブルデュー教授を招いてシンポジウムを開催したことや、ワイン業界を取材したNHKの番組が全国ネットで放送されたことで、日本に甲州ワインブームが訪れました。

美味しいワインは美しい場所でつくられるもの

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敷地の奥に位置しているのが醸造所。富士山ワイナリーは、元々この建物から始まりました。
国立公園内ゆえ新たな建物を造るのは困難でしたが、幸いにも元々牛舎があった場所だったため、5年以内に建てるという条件のもと、ギリギリのタイミングで建設できたと言います。

/userfiles/images/columns/42191/提供(insta)_ぶどう.jpeg 画像提供:富士山ワイナリー

富士山ワイナリーの自社畑で育てているのは、日本古来のぶどう品種「甲州」がメイン。
ワインぶどうの栽培で重要なのは育てる場所であり、標高500m以上で、日当たりと風通しのいい場所でないと美味しいワインぶどうは育たないそう。シンガーさん曰く、「富士山の西~南側は、ワインぶどうづくりに理想的な場所」なのだとか。

/userfiles/images/columns/42191/提供(insta)_富士山.jpeg 画像提供:富士山ワイナリー

「長野や山梨のさまざまな場所で実験栽培したノウハウを活かして、ワイナリーのある富士宮市でぶどうを作りたい」という思いを叶え、この朝霧高原と人穴の地にぶどう畑を設けたシンガーさん。標高600m以上に位置する富士宮市人穴は、ワインぶどうがとてもよく育つと言います。

ワイン評論家のパーカー氏から「軽く爽やかな口当たりで和食を引き立てる」と高い評価を得た富士山ワイナリーのワインは、2008年1月、日本のワインとして初めてEUに出荷されました。現在では、日本を代表する多くの高級日本料理店でも人気を博しています。

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富士山ワイナリーで製造するワイン。
左から
○SAKUYAスパークリングロゼ(甲州50%+マスカット・ベーリーA 50%)
○SAKUYAスパークリングロゼ(フランス産シャルドネ&ピノ・ノワールブレンド)
○シゼンスパークリング甲州2019(瓶内で5年間熟成)
○シゼン甲州 2023(垣根栽培)
○フジサンワイナリー甲州(棚栽培)

/userfiles/images/columns/42191/3_ErnieAimee&IMG_9259.JPG 画像提供:富士山ワイナリー

2015年からは、シンガーさんの娘・エイミーさんが醸造家として富士山ワイナリーに参加。ヨーロッパやオーストラリアでワイン作りに携わってきた経験を活かし、父娘で一歩ずつ夢を実現させています。

富士山ワイナリーでは、フランスやスペインのワインをコンテナで輸入し、ボトル詰めして販売する事業も手がけているため、醸造所にあるタンクには、それらのワインも収められています。
1つのタンクは1万リットル。処理を最低限にとどめ現地の味わいをそのまま楽しめるフレッシュワインが1000円台で購入できると人気です。

ボトル詰めをする建物の裏には井戸があり、ミネラルたっぷりの富士山の雪解け水が湧き出ています。超軟水で美味しいこのミネラルウォーターも、ボトルで販売されています。

都会にはない良さがある。富士山を心ゆくまで眺められるカフェ

/userfiles/images/columns/42191/DSC_0676.jpg 画像提供:富士山ワイナリー

2024年7月、醸造所の横に「Cafe SHIZEN(カフェシゼン)」がオープンしました。
ワンちゃん連れでの入店もOKで、ここに来ることを楽しみにしているワンちゃんも多いのだそう。

/userfiles/images/columns/42191/提供(insta)_ワイン.jpeg 画像提供:富士山ワイナリー

カフェの店内は一部がガラス張りになっていて、天気が良ければ壮大な富士山を眺めることができます。
ここにカフェをつくった理由は、ワインを楽しんでもらうのはもちろん、富士山のオーラ、富士山の魂を感じてほしいという想いから。
時間や季節により、豊かに表情を変える富士山。それをゆっくり楽しめる場所は、意外に少ないんです。

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「帰りたくないと言う人も多いんですよ。1時間や2時間、いや3時間でもゆっくり過ごしてもらえたら。富士山が見えなくても、毛無山もあるし、自然の中でゆっくりと過ごせます」とシンガーさん。

/userfiles/images/columns/42191/4_grilledpork_idx.jpg 画像提供:富士山ワイナリー

カフェでは水曜から日曜まで、シェフが作るランチを楽しむことができます。
主に富士宮で採れた厳選食材を使った、ここでしか味わえない料理ばかり。もちろんワインと共に楽しむのがおすすめですが、飲めないかたのためにノンアルコールメニューも充実しています。

地方を目指す若者にチャンスを。夢あるワインぶどう栽培のススメ

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今後は自分たちだけでなく、地域で盛り上がっていきたいという想いがあるそう。
「近くにバギーやパラグライダーなどアクティビティもあるし、キャンプ場などの宿泊場所もあるので、朝霧エリアのあちこちで楽しい時間を過ごしてもらえたらいいなと思います。
そして富士山麓には活用できる土地がまだたくさんあるので、もっとぶどう畑と、そこで働きたいという人を増やしていきたい。ワインぶどうには夢があります」
とシンガーさんは語ってくれました。

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SDGsは人を大切にするのが大前提だと考えているシンガーさん。
「若い人たちが誇りを持ってここに集まり、結婚して子どもを養うところまで考えないと、持続可能にはならない。そこまで考えてワイナリーの経営をしていこうと思っていますよ。地方で生きていきたいという人も増えているが、地方では生活できる見込みがないと思っている方も多い。そういう若者にチャンスを与えたいですね」と話してくれました。

ワイナリーは無料で見学やテイスティングが可能。ワインぶどうの栽培に興味があるかたからの問い合わせも受け付けています。
Cafe SHIZENと富士山ワイナリーで、ワインを飲みながら美しい富士山を眺める至福の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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